3Oct
先日、再放送をしていたオリバーサック氏(故人)の「幻覚が解き明かす人間のマインド」というTEDカンファレンスを観ました。とても興味深い話で飽きることなく最後まで観てしまいました。
目が見えなくなった人の1割に起こる”シャルル・ボネ症候群”の話をとても分かり易く話しておられました。
目は脳の一部が外に出ている珍しい器官であると以前・・解剖学の養老猛氏の本で読んだ覚えがあります。そして、このシャルル・ボネ症候群こそ、その脳の一部が閉鎖された事(見えなくなる)によって発生する脳のミスリード(暴走)が原因らしい。なので、機能が誤作動しているだけで、精神疾患ではないとの事。これはとても重要。なぜなら目が見えなくなる年齢は高く、認知症や精神疾患と思われてしまう可能性が高い為、幻覚が見えている本人は他人に言えない。年老いて体のあちこちが悪いのにとうとう精神も病んでしまったと。。思っているハズです。この事はあまり知られていないですもんね。
オリバーサックス氏は目の見えなくなった人の10%でこの事象があると言っていました。しかし、報告は1%しかないという事です。クレイジーになっているとは誰も思われたくありませんよね。でも、見えない目なのに、知らない人間が見えたり、幾何学模様がみえたりしたら、それはかなり不安になります。気が変になったと思われない為に言わないっというところがすでに正常なのですが、本人だとそれには気が付かないものなのでしょう。
オリバーサックス氏のお話しによると精神疾患者の見る幻覚とシャルル・ボネ症候群の幻覚の大きな違いは「見えているモノとの交流があるかどうか」と仰っていました。
見えているものと話したり、触れ合ったりしている感覚があれば・・精神疾患、全く知らないものがただ見えていてそれを見続けるだけで、かと言ってその中に入り込む事はなく、ただ映画を見ている状態で淡々と見せられるのがシャルル・ボネ症候群らしい。
オリバーサックス氏はこういう現象が起こる事を目の見えなくなった人に知ってもらって、もっと報告してもらいたいと仰っていました。
目は加齢と合わせて別の病気の影響でも見えなくなってしまう可能性が高い器官。緑内障、糖尿病網膜症、白内障・・。若くても病気があれば失明の可能性は出てきます。もしそうなった時に幻覚が見える可能性を知っていれば、万が一、変なものが見えるようになったとしても心は備えられます。精神疾患ではないという事実は、少なくとも本人の心を保つのに大きな意味があると思います。
なんと、”TED”の最後にオリバーサック氏自身もガンにより右目の視力を失ってから、幾何学模様の幻覚を見ていると言っていました。ほんとうに幻視が見えるのはたった10%なのでしょうか?もしかしたらもっと確率が高いのではないかしらん?っと素人なので数字の根拠を無視して思ってみたり・・。
ちなみに、シャルル・ボネ症候群で起きる脳の暴走は・・歯や口などを取り扱う脳の部分にも近いらしく、突然人物が見えたりした時(知らない人がほとんどらしい)その人物の口が曲がって見えたり、異常な程大きな歯があったりと、オカルトチックにも感じるような、妙な演出までしてくれちゃうそうです。こんな映像を見せられたら誰でも自分の頭の中に自信が無くなりますよね。おかしくなっていると思っても仕方がありません。しかし、これも脳が完結できない機能の代替作業を無理して頑張ってくれている証拠なのかもしれません。余計なお世話なんですけどね(苦笑)そして単なる暴走という結果になってしまうという。
目が見えなくなったのならば、何も見えないのが当たり前のようですが、丸や四角の幾何学模様が見えたり(物体の外形を判断する脳の部分にも近いらしいです)する事もあるらしいです。(オリバー氏もこの現象があった)
人間の脳は・・誠に不思議でございます。このシャルル・ボネ症候群は250年前に提唱された「視力障害者に特有な幻視の症状」と言われています。(これは脳も精神も正常であるとオリバー氏も断言しています)。そんなに昔から解明されていたのに、浸透しないものなのですね。しかし、今回のカンファレンスの映像を見て、現在の高齢化社会にこそ必要な情報だなぁと思った次第です。これはもっと多くの人に知らる事ができれば、幻覚を見ている本人が随分と安堵・安心するだろうに・・と思った非常に為になるお話でございました(^^)
では、また。
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